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人は対価で判断する

仕事やプライベートにおいて他人との友好関係を構築する際は、時として大変な労力を要することがあります。
そのような時、ただ闇雲に相手の機嫌を窺うだけでは適切な関係性が得られないどころか思わぬ失敗をして取り返しがつかなくなってしまうことも珍しくありません。


そうならないためには「対価」と「評価」の関係性を正しく理解し、それを活用する必要があります。


そこで今回は、友好関係を効率的に築き上げることを目的として、その際に「対価」がどのように「評価」と関連し、相手の行動を決定づける「判断」につながるのかについて解説していきましょう。


対価の果たす役割

まず、人が行動を起こすには必ず何かしらの「判断」が伴っているということを理解しておく必要があります。
そして、それには自身の「評価」が深く関係しています。


つまり「この人とは友好的な関係を続けたい」と思わせるには、まずそのきっかけ作りが必要です。
そこには相手にとってあなたがどのような存在であるのかということが重要とってきます。


では、あなたは相手に対してどのような存在であればよいのでしょうか。
単に仲が良いというだけでは十分でありません。
一見仲良く見えていても、相手から臨んだ行動を引き出すことは難しく、またそれとは反対に、仲が良すぎるがためにお互いに深入りしすぎてしまうこともあります。


そこで着目すべきなのが「対価」なのです。簡潔に述べると、「この人と仲良くすることは私にとって得だ」という認識を持たせるようにするのです。
そしてその「対価」が魅力的であればあるほど「評価」も上がり、結果として良い「判断」を引き出しやすいということになります。


では、「得だ」と思わせるには、一体何が「対価」として有効なのでしょうか。
今回はそれを「物質的対価」と「精神的対価」に分けて考えます。


物質的対価

この記事においては、お金やプレゼントなど、好意を期待して相手に与えるものが具体的な物質であるとき、これを「物質的対価」と呼ぶことにします。
もっとも分かりやすい例として、まず給料を例に挙げましょう。


これは対価である「お金」によって、「この人は私にお金を与えてくれる徳な存在だ」という評価を植え付け、従業員から「働こう」という判断を得ているといえます。


「物質的対価」のメリットは即効性にあり、相手に与えるものが、よほど突拍子もないものでない限り、ある一定の評価を得ることができるのです。
そして、その評価はすぐに相手に受け入れられ、結果として何かしらの行動を起こすきっかけとなる判断を得ることができます。


一方で、この対価に持続性はありません。
即ち、対価が行為に与える影響は少なく、評価を得るためには対価を継続的に与える必要があるのです。
この場合、相手はあなた自身にではなく、対価そのものに価値を認めているケースがほとんどなのです。

したがって、その対価が与えられなくなった途端に良い評価は得られなくなるという構造になってしまいます。


精神的対価

さて、これまでに述べてきた「物質的対価」とは対照的に、好意を期待して相手に与えるものが具体的な物質でないとき、それを「精神的対価」と呼びます。
精神的対価の結果の例として、恋愛関係を挙げましょう。


恋愛においてはお互いに、安心感や幸福感といった非物質的なものを与えあっているケースがほとんどです(もちろんそうでない場合も世の中には存在します)。


これは相手から「一緒にいる」という判断を得るために、「この人といると幸せだ」という評価を与えていることになります。
多くの場合、「精神的対価」に即効性はありませんがその代わりに持続性が期待でき、与えるものが物質ではないため、具体的なコストの心配もありません。
そして精神的対価によって築かれた関係性は強固なものになりやすいという傾向もあります。


ただし、気を付けなければならないのはこの関係には依存性があるということです。
持続性のある、強固な関係とは、そう簡単には切れない関係であるともいえるため、何か問題が生じた際に、そこから抜け出すことが非常に困難になるという弱点があります。


また、先にも述べた通り、相手に与えているものが非物質的である以上、自身が「対価を与えている」という事実に気づかないことが少なくありません。
そのため、無意識に、関係を継続させるための対価を支払い続けてしまい、結果として相手の依存性を引き起こすのです。


2つの対価の使い分け

このような特徴を持つ「物質的対価」と「精神的対価」はどのようにして使い分けるのが適当なのでしょうか。
そのカギは、相手にどのような「判断」を求めているのかということです。
その「判断」が自身へ向けられる好意と直結している場合や、「評価」を得ることも重要視している場合には当然、「精神的対価」が適切といえるでしょう。
友好関係を築き上げたい場合、大半はこのケースに該当します。


しかし、友好関係と親密な関係との間に等号は成立しません。
つまり、ただ単に相手の行動を引き起こす「判断」を求める際には「物質的対価」の方が適切なのです。
良くも悪くも「物質的対価」によって引き起こされるのは「後腐れない関係」で、必要以上に「精神的対価」を支払うと、相手に深入りして(あるいは深入りされて)しまいます。


そのためにも、自身の目的を明確化したうえで適切な対価を選ぶことが重要であるといえます。


まとめ

誰かと友好関係を結ぶ際には「評価」と「判断」、「対価」の関係性を理解することが重要です。
特に関係の構築にはどのような「対価」を支払うのかということが大切で、具体的な「物質的対価」と非物質的な「精神的対価」がもつメリットとデメリットについて理解しなければいけません。


「物質的対価」と「精神的対価」のメリットはそれぞれ即効性と持続性、デメリットはそれぞれ評価を得るのが難しいことや、依存性が生じることです。
相手にどのような「判断」を求めているのか、それによってこの2つを使い分けなければなりません。


好意とは無関係な判断を求めている場合には「物質的対価」が、好意と関わりの深い判断、あるいは相手からの評価も重要である場合には「精神的対価」が有効であるといえるで
しょう。