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アメリカが早期リタイアが多い理由

アメリカの若者の中に早期リタイアを目指す人が増えています。
早期リタイアとは、働かなくても暮らしていけるお金を貯めて、仕事に依存する生活から脱出し、必要最小限のコンパクトな生活をすることです。


そこには彼らのアメリカ競争社会・無限に続く出世レースから抜け出したい、スローライフを送りたいという願望が根底にあります。


ビジネスで大成功してリタイアすることと趣が異なる早期リタイアの背景には、何があるのでしょうか。


アメリカの競争社会

アメリカはビジネスしやすい国ですが、競争社会で常に成果をあげることが求められ、日本とは比較にならないほど実力が問われます。
そのため、大卒新入社員の年収が500万円、ホワイトカラー層の世帯年収が1000万円にのぼることはごく普通で、日本の環境とはまったく違うのです。


彼らは常にスキルアップしなければ競争に取り残されるという呪縛から、社会でキャリアを積んでもなお大学院に再入学し、学ぶことまであります。
このような状況や環境に嫌悪感をもち、合理化された現代の社会システムから抜け出す方法を模索している人が、アメリカ社会の若年層に一定数いるのです。


金融やIT業界の高学歴、高収入のホワイトカラー層は、さらに上を目指すことも可能ですが、彼らは気が遠くなるほどの競争と、これから先に起こりうる社会を常に理解しています。
社会システムを知り尽くしているからこそ、彼らは自分たちがいる組織のなかで折り合いをつけるのではなく、ある程度のところで見切りをつけリタイアするという選択をするのです。


定年退職がないアメリカ

アメリカには定年退職がなく、自分でリタイアする年齢を決めます。
The Age Discrimination in Employment Actという法律で、雇用や労働条件について年齢を理由に差別することを禁止しているのです。


投資家、ウォーレン・バフェットは90歳を過ぎても現役であり、世界中から注目を浴びています。
日本では65歳定年制、再雇用制度、早期退職優遇制度があるので、定年60歳の時点で3種の定年制度から働き方を選択することができます。


アメリカでは年金を受け取るタイミングなどで仕事をリタイアする人が多いのですが、年金制度の改正に伴い、満額受給年齢が段階的に引き上げられているのです。
そのため年々リタイアの平均年齢が上昇しており、平均寿命が延びるのと同時に老後の資金を心配する声が上がっています。


アメリカ人は、競争社会のなかスキルアップして早期リタイアするか、リタイアできる余裕がなければ会社に依存して暮らさなければなりません。


早期リタイア、FIREとは

FIREとはFinancial Independence Retire Earlyのことで、お金を十分に貯めることができたら早期リタイアできるということです。
アメリカでは早期リタイアは珍しいことではなく、成功を収めた人が引退し悠々自適な人生を送ることは名誉そのものでした。


しかしFIREという最近の考え方は従来の早期リタイアとは異なるものだといえるでしょう。
成功してリタイアするのではなく、現役時代に稼いだお金のほとんどをリタイア後の生活資金と老後資金を確保するために投資し運用します。
最大の投資対象である住宅も、借り手の保護を徹底していることや、不動産価格が収益還元方式であるため中古でも価値が落ちません。


FIREの中心は高学歴・高収入なホワイトカラー層で、夫婦で徹底して節約すれば早期に数千万円の貯蓄を達成するのは容易いことです。
そのため引退する頃に、1億円を超える資産を保有していることも珍しくありません。


引退後は確保した資金を計画的に運用しつつ、競争社会から離れて自由になり、余計なお金を使わず、コンパクトでスリムな生活を手に入れます。
強い目標から早期リタイアを達成して、何にも縛られず、依存もしない暮らしを可能にしているのです。


早期リタイアのための資産形成

早期リタイアする人に共通していることは、徹底した倹約と貯蓄、計画的な資産運用と4%ルールを実践して、資産を維持したまま不労所得で生活している点です。
4%の数字は米S&P株の成長率から、アメリカのインフレ率を差し引いた数値で、米S&P株は投資家が市場全体の動きを見るときによく参考にしています。


アメリカでFIREのキーワードになる4%ルールとは、年間支出の25倍の元手となる資産を確保して、年利4%の運用益で生活するという考え方です。
年間支出が240万円とした場合、4%の利回りで捻出するには6000万円の元手が必要です。
アメリカで4%ルールは一般的で、実現するには元手を確保することから始まり、効率的に元手を確保し資産形成をするために、彼らは生活を切り詰めて収入の多くを貯蓄や投資に回しています。


リタイアする年齢と自身の資産状況から逆算して、毎年の貯蓄額を算出し元手の確保をするのです。
年収が高い人が生活を切り詰めると、10年~15年程度で目標の貯蓄額を達成することは理屈では可能といえます。


アメリカでは株式などに投資して資産を増やすことは一般的なので、貯蓄相当額を投資すれば長期的にみて億単位の資産を保有することができるでしょう。
この資産を元手に、債券などに投資することで、年間数百万円の不労所得を得ることができます。


アメリカ人のリタイアのタイプ

アメリカ人のリタイアには、通常リタイア、早期リタイア、セミリタイア、ミニリタイアなど4つのタイプがあります。


通常リタイアは、55歳以上が対象の最も一般的なタイプで、日本の定年退職と最も近い考えであり、リタイア後、仕事は一切しません。


早期リタイアは、25~55歳でリタイアすることで、リタイアまで仕事を継続しますがリタイア後は仕事をせず、節約しながらコンパクトに生活するのです。
セミリタイアは、半分リタイアしているという意味で、具体例として週の労働を15~25時間に抑える働き方をします。


ミニリタイアは、6ヶ月間仕事をして残り6ヶ月を自由に過ごす働き方で、よくマラソンに例えられるでしょう。


まとめ

アメリカは早期リタイアがなぜ多いのか、日本とは比べ物にならないほどの競争社会を知ると、早期リタイアをする意味がわかります。
彼らに共通することは、目標がハッキリと決まっていてまったくブレません。


目標を達成するために働き、給与のほとんどを投資に回して生活しているのです。


そして自由で充実した暮らしを手に入れ優雅に過ごす人や、新しい可能性に挑戦する人もいます。