ICOは企業や新興企業が事業プロジェクトのために、独自の仮想通貨を発行して資金調達をする仕組みとして注目されました。
このICOの最大のメリットとして挙げられるのが、企業は短時間で高額の資金調達を達成し、投資家は少額で予想以上の利益を得ることができるという、企業・投資家双方にメリットがある点です。
しかし誠実な事業プロジェクトが進む一方で、上記のメリットを利用した多くの詐欺プロジェクトが横行したため、世界中で規制され新たな発行件数は大幅に減少しブームは終焉しました。
ICOブームとは何だったのか、もう少し詳しくご説明いたします。
ICOの成功事例
一部では「仮想通貨バブル」と呼ばれるほどのICOを使った資金調達は、自分たちのプロジェクトを形にしたいと考える人にとって画期的な手法でした。
中でも瞬時に資金調達を成し遂げた企業のプロジェクトは、独創性や将来性があり投資家に期待を持たせるもので、現在も多数のプロジェクトが継続されています。
イーサリアム
現在も開発中のイーサリアムは、プロジェクト資金調達のためにイーサを発行しました。
このイーサは開始12時間で約2400万円相当の資金調達に成功し、終了後に集まった資金は15億円、1年後16倍、3年後5000倍になりすさまじい大成功を遂げました。
これは様々なアプリやゲームなどの開発や稼働ができるという技術のほかに、新しい仮想通貨を作り出せるという将来性を見込んだ投資家が集中したからです。
イーサリアムはアップデートを行うことで着実に実績を積み、それを裏付けるように価格は高水準で推移しEEA(イーサリアム企業連合)の発足で更に将来性への期待が高まりました。
Brave
Braveはイーサリアムを使った独自トークンBAT(Basic Attention Token)を販売するというICOで、開始後30秒程度で3500万ドル(約40億円)を調達し話題になりました。
同社のブラウザはユーザーのプライバシー保護とUXの向上がメリットで、過度なトラッキング、
データの保存や売買をしないため表示が速いのが特徴です。
加えてネット広告システムの問題点についても、ブロックチェーン技術を使うことで全ての関係者がメリットを得られる新たな広告形態を持ち、これによる有用性や費用対効果の向上が期待されました。
BATをシステム内で流通しブラウザ上で収益を得るシステムの開発など、現在も開発を継続しており次世代ブラウザとして将来性があります。
ICOブームのきっかけ
プロジェクト公開後数秒で数十億を調達できるこの方法は、企業や投資家にとって互いに利益を得られるため、一気にICOはブームになりました。
企業がICOを利用した理由
ICOには企業審査がなく、プロジェクトPRのホワイトペーパーだけで資金を調達できるため、早急に資金を得たいと考える多くのスタートアップ企業にとってうってつけでした。
また企業が独自に発行した仮想通貨を投資家が購入するため、金銭貸借時のような返済の義務がなく、株式投資のような配当も不要で、経営権を渡す必要もありません。
加えて資金調達について、金融機関では必要になる与信審査がないのでハードルが低く、世界中から調達できることで、企業の発展や認知度向上につながる魅力があります。
すべてが企業と投資家間で成立するため、ホワイトペーパーを準備するだけで資金を得ることができたことこそが最大の魅力だったのです。
投資家がみたICOの魅力的な利益
企業のプロジェクトが評判になり人気がでることや有名企業の介入、世界情勢などで仮想通貨の価値に変動が現れ、上昇した価値と購入時の差が投資家の利益になります。
投資家が購入した仮想通貨は、高評価を得ると爆発的に価格が上昇、短時間で高額な利益を得ることができる事例が発生し、魅力的な事実に多くの投資家がICOに集中しました。
世界中のプロジェクトに参加できることや、将来性を自己判断し少額でも投資ができることが参加を増やした要因です。
ICOが衰退した理由
ブームに火がつき多くの投資家が巨額の富を得ると同時に、企業は数十億単位、もしくはそれ以上を資金調達によりプロジェクトへ費やしました。
しかし詐欺の横行や世界的な大規模規制によってICOが衰退することとなりました。
架空プロジェクトと資金調達後の失踪
ICOを利用した資金調達にはそもそも審査がなく、また利便性を重視し企業と投資家間のやり取りの多くをネット上で進めていました。
このメリットを悪用し、架空プロジェクトを立ち上げ資金調達後に資金をもって失踪する事例や、ハッキングにより調達された37億ドルのうち10%以上が盗難や紛失をしていることが明らかとなりました。
ホワイトペーパーの中にはイーサリアムなどのチームであると偽ったり、無知で安易な投資、規制が及ばない仮想通貨の世界で資金を得ようとしたりする詐欺団体が横行したのです。
各国金融当局の規制強化
ICOについては中国が全面禁止を開始してから多くの国が規制もしくは見直しなど、何らかの形で規制強化するようになりました。
投機需要の高まりに相反して詐欺的なプロジェクト、規制が整備されていない状態で資金調達が継続されていたため、乱高下が目立ち損失や破綻するプロジェクトも相次ぎました。
ICOの現状と将来性
仮想通貨の乱高下は大きな利益と損失を生み出しますが、中でも利益に対しては税金問題が発生します。
ブームが過ぎてしまったICOの現状と将来性はまだあるのでしょうか。
瞬間億り人の損失と税金
資金調達に参加した投資家の中には、仮想通貨の売買で得た利益に課税されることを知らずに、あるいは知っていても申告できない投資家がいます。
こういった投資家の多くは価値が高騰を続けている間仮想通貨同士で乗り換えることで生み出される含み益を利益としています。しかし換金せずに保有しているあいだに暴落してしまい、乗り換えることができないため、結果的に手元には残らなくなってしまうのです。 このように仮想通貨の暴落で、税金に充てる資金を捻出できない「瞬間億り人/億り人」が苦悩しています。
法規制と新たな資金調達方法
今や経済大国となった中国による仮想通貨の規制に追随する形で世界中の規制が始まり、健全な資金調達ができるように、各国でルールが整備されるようになりました。
資金調達の手段にも変化がみられ、ICOからセキュリティを求められるSTOへ、IEOは投資家保護を実現することに成功し、その手段は常に進化しています。
まとめ
ICOを利用することはスタートアップ起業家にとっては非常に有利で、プロジェクトを早々に成し遂げる可能性があることは事実です。
一方で企業の信頼を逆手にとる詐欺やハッキングなどへの対策をしっかりと講じ、ICOの強みを活かした運用方法をまだまだ模索し続ける必要性があります。
今後も安全な資金調達や投資を継続するために、調達方法の改善や規制などの取り組みを注視しなければなりません。