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イギリスが絶対的な投資大国な理由

18世紀からイギリスではコーヒーハウスに品格ある紳士たちが集い、市場をみて投資を行っていました。
イギリスは大英帝国の拡大に伴い世界の金融市場で中心となり、社会インフラや金融インフラを整え、投資大国としての地位と影響力を手にしました。


タックスヘイブンは、世界中から富裕層の資産が集まり世界金融に影響力をもっています。
イギリスには金融業界を取り巻く環境を大きく変化させることや、世界の金融市場をリードする理由があるのです。


シティオブロンドン

シティオブロンドンとは、数々の特権が認められている世界最古の自治都市で、イギリスのロンドン旧市街中心部に位置しています。
正式にはシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションですが、シティまたはスクエアマイルと呼ばれており、ロンドンシティの行政の一部で数々の特権が認められているのです。


権利の源泉が国王にある時代に、自治都市として国王と交渉した記録や、都市の設立に国王が下すチャーター(許可状)がシティには存在しません。
これが、シティと国家が対等の政治的権利を有する根拠とされています。
国王はシティに入るとき武器を置かねばならず、市長と国王の取り決めで許可なく立ち入ることも許されません。


シティは英国王室の財政支援の代償として、数々の特権を得てコモンロー(慣習法)として認められ、ロードメイヤーズショーではその特権を誇示し権利を広く認知させています。


シティの地位・影響力・秘密主義

シティは潤沢な資産、特異な地位や権利を得て、世界中に大きな影響を与えているのです。
イギリスは王室属領、海外領土、イギリス連邦や旧植民地、世界中のタックスヘイブンの中心になり金融ビジネスに影響を与えコントロールしています。


イギリスの投資大国としての地位

イギリスは他のヨーロッパの主要国にはない金融インフラや、他の都市にはない社会インフラが整っており、投資大国としての地位を築いています。
シティには、ロンドン証券取引所やイングランド銀行、ロイズ本社などが密集する金融センターがあり、金融サービス業は2019年の英国GDP全体の6.9%を占め、国際金融取引のなかでも、外国為替取引や金利OTCデリバティブ取引、クロスボーダー銀行貸し付けは世界第1位です。


イギリスが投資大国として世界の市場をリードする要因は、タイムゾーン、英語圏、安定した税制、優秀な人材が揃うことにあります。
これはファイナンスシステムに必要な人材や情報、資金が長い歴史のなかで培われているからです。


シティにはイングランド銀行を筆頭に、FRB(米連邦準備銀行)の株式の多くをシティの金融街が握り、事実上シティが米国を動かしているといっても過言ではありません。
またアメリカにCFR(外交問題評議会)をつくり、金融以外にアメリカの政治、経済、軍事もシティが支配する仕組みがあるのです。


イギリスが金融市場に与える影響力

単一パスポート制度は、欧州経済領域で営業免許を取得すれば、他の域内国でも業務ができる制度でした。
しかしイギリスのEU離脱により、継続できない懸念があり、企業が他国へ移転する事態になっています。


イギリスは代替措置として、EUと同等と認めた場合に限り、市場アクセスを認める(同等性評価)と公表しましたが、相互に納得する結果になるのか不透明です。
EUは専門サービス、金融サポートともに豊富な経験がある英国との関係悪化は避け、同等性での合意を目指しています。
そしてイギリス政府は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の2021年末廃止に向けて、英金融行為監督機構の権限を強める方針を明らかにしました。


LIBORの廃止により、これまでの契約の見直しや会計業務、システムなどに問題が発生し世界中の金融機関や企業に影響があります。
ポンドは代替金利指標として、ポンド翌日物平均金利(SONIA)が指定されており、イングランド銀行が算出、公表し債券やデリバティブなどで移行が進んでいて、市場ではタフ・レガシー契約と呼ばれる対応が課題になっているのです。

タックスヘイブンの秘密主義

タックスヘイブンとは税金が低いもしくはゼロである地域で、居住地にすれば個人ならほとんど税金はかかりません。
そのため、世界中の会社や富裕層が本拠地を置き、会社全体で税金を抑えるため本社を設置することが多いのです。


タックスヘイブンは秘密主義を採用し、国内の口座、会社などのデータを余程のことでなければ外部に漏らしません。
そのため、脱税の抜け道や犯罪、汚職、不正なお金が集まり、それらを幇助し、犯罪につながるお金の隠し場所であると世界中から非難されています。
しかし、タックスヘイブンは大英帝国の後ろ盾があり、影響力が大きく今でも厳然としており、イギリスが世界の金融市場に影響力をもつ理由になっているのです。


国際決済銀行によると、世界のオフショア市場の約55%をイギリスが占めることから、これらのお金の多くはイギリスが取り扱っています。
イギリス経済の凋落と戦争によりポンド危機に見舞われた経緯もありますが、タックスヘイブンをつくることで世界における金融センターの地位を保つことに成功したといえるでしょう。


シティとウォール街の違い

シティとウォール街は金融センターとして比較されることがありますが、実質的には全く異なります。
ロンドンの中心部にシティはあり、面積規模は約2.9平方キロでスクエアマイルと呼ばれることもあるでしょう。


シティにはロンドン証券取引所やイングランド銀行など金融機関が集約し、ロンドン市の行政都市の一部で多くの特権がある自治都市となっています。
ウォール街はニューヨークのマンハッタン南東部に位置し、ニューヨーク証券取引所、連邦準備銀行などがある金融街です。


金融取引量は世界一ですが、ウォール街では多くが国内の取引なので、それだけアメリカ市場が大きいといえます。
しかし、世界金融全体のシェアでみると、ロンドンのシティがウォール街を超える取引量を占めているのです。


まとめ

イギリスが絶対的な投資大国である理由について、ロンドンやシティオブロンドン、イギリスの植民地など、タックスヘイブンにつながるお金の流れをご紹介させていただきました。
今ではドルが基軸通貨で、国際通貨のなかで支配的な役割を占めていますが、ポンドを度外視することはできません。


新興国の経済成長が著しい昨今、数年後に基軸通貨が変わるときがくるかもしれないので、注目しておきましょう。