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アメリカが他国の投資をできない理由

投資大国といわれているアメリカは、他国の株式や投資商品について取引が制限されているのです。
アメリカ政府はFATCAを導入し、アメリカ人、グリーンカード保有者、米国居住者の迂回投資による租税回避行為を防止し、国外に居住している口座保持者の取引や新規口座開設、投資信託などやそれまでグレーゾーンだった金融取引も規制されています。


FATCAにより金融機関や、非居住者の取引制限などの規制など広範囲に影響があるようです。
今回は、アメリカが他国の投資をできない理由について迫りたいと思います。


タックスヘイブンとは

タックスヘイブンとは、税率が日本や欧米諸国と比べて、極端に安い国や免除される地域です。
バージン諸島やケイマン諸島、ジャージー島や富裕層への優遇制度が手厚いオランダ、ルクセンブルクなどさまざまな国があります。


特徴は無税、所得税がないこと、特定の事業を行う企業の税優遇、国外の所得について課税しないなどの優遇措置を適用できる点だといえるでしょう。
租税条約を締結していない、もしくは締結しつつ税率が非常に低く、配当に対し課税されないこともあるのです。


例えば、日本では投資利益に対して20%が課税されますが、税金が安い国で投資を行うと利益が減るのをおさえることができます。
国を維持するために税金は欠かせませんが、タックスヘイブンでは税金を安くして世界中の富裕層を呼び込み、地域経済を活性化させる目的があるからでしょう。


大企業や富裕層に重宝され実際に移住する人も多く、ほとんどの人がタックスヘイブンを経由して税金を安く納めており、秘匿性が高く情報も厳格に守秘されているため、マネーロンダリングの拠点として利用される背景があります。


またパナマ文書により顧客名簿が流出し、首相や政治が辞任に追い込まれ大きなスキャンダルになったことも有名です。


FATCAとCRSによる規制

大手プライベートバンクUBS銀行の行員による米富裕層顧客の脱税幇助疑惑が発覚し、アメリカはFATCAを制定しました。
国際的に脱税を回避するCRSは、加盟各国同士で非居住者の口座情報に関する情報交換をしています。


FATCAとは

FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)とは、アメリカ人、米国居住者による海外口座、オフショア口座を利用した租税回避防止のため法律です。
米国人富裕層の国外所得を入手するため、外国の金融機関に対してアメリカ人の口座情報をIRS(内国際入庁)に報告するように義務付けています。


アメリカ人や米国居住者が米国外で所有する金融資産について把握を徹底し、資産に対する税金を確実に確保し管理しているのです。
FATCAはアメリカが税制の抜け道を阻止するために、世界中の金融機関に大きな影響を及ぼすネットワークで、協力しない場合は30%の源泉徴収義務が課せられます。


また、QI(Qualified Intermediary)はFATCA施行以前から施工されている米国法です。
アメリカ人が国外の金融機関を通して迂回投資を行うことや、居住地を偽り税制条約の特典を不当に受けることを防止しています。
FATCAやIRA、QIは世界中のアメリカ人や米国居住者の税収確保や、マネーロンダリング阻止のためにあり、すべての口座が監視されているのです。


CRSとは

CRS(Common Reporting Standard)とは、2014年にOECDで策定された共通報告基準のことです。
FATCAと同様に国際的に税金逃れを阻止するため、非居住者の口座や情報などを、世界中で共通化し参加国の税務当局で互いに提供しています。


CRSはFATCAがベースにあるので、参加国同士なら住んでいる国と住んでいない国同士の銀行データが相互に共有されていますが、アメリカはOECDに加盟しているにも関わらず、CRSは適用されない国で対象外です。
だからといって、非居住者が税金逃れのために資産を移動させると、最高で懲役30年の罰則があります。


CRSは資産を本国から隠すため、税金が安いあるいは非課税の国で口座を開設していることが問題視され、脱税しようとするひとを罰するために有利です。

アメリカではアメリカ国籍を持っているひとは、世界中のどこに住んでいても税収が国に入るようにFATCAを採用しました。
CRSは税金を納なければならない国に対して、管理できていなかった当該国民の海外にある資産データが届き、脱税を防ぐ仕組みになっています。


非居住による投資の制限

非居住者によるファンドなど投資についてグレーゾーンだった金融取引が、口座の閉鎖や取引の制限をされています。
FATCAにより米政府が国外の金融機関に対して、コンプライアンス、報告義務、それらの義務を怠ったとき、多額のペナルティがあるのです。


そのため、厳しく制限する金融機関が増え、電話の発信国を追跡することや、顧客のIPアドレスで発信国を認識するソフトの導入など取り締まりを始めています。
アメリカ人や米国居住者は、一定額以上の国外の海外資産についてIRSに報告する義務があり、当該金融機関もアメリカ政府に口座情報を報告しなければなりません。


前よりも国外の金融機関で口座を開設するのが困難で、新規口座開設は受け付けない、既存顧客でも大口でない限り閉鎖を強要するなどの変化があり、確認手続きも煩雑になりました。
日本でもIRSへの報告義務が発生し、株やETF、投資信託などの取引ができません。


FATCAによる影響

FATCAは、簡単にいえば超富裕層の税金逃れを目的に定められました。
結果、過度な規制のために銀行の負担は大きく、さまざまな変化を背景にアメリカ人、グリーンカード保有者の中には市民権を放棄する人が増えています。


アメリカで長い間暮らしていた人が、アメリカ以外で老後を過ごすことを考えて、市民権、グリーンカードを放棄する傾向にあるのです。
皆、規制が厳しく納税義務や金融資産の報告義務から解放をされるのを望んでいます。
しかし、市民権もグリーンカードも放棄する場合には、Exit Tax(離脱税)が課せられる可能性があるのです。
離脱税の対象になると、放棄した日の前日に全財産を市場価格で売却した仮定で発生する、キャピタルゲインについて税金がかけられます。


まとめ

アメリカが他国の投資をできない理由を辿ると、世界中の情報を集め税収を確保している仕組みにより監視されており、それに対し嫌気がさす人が多いのも納得がいくのではないでしょうか。


一部の超富裕層のためにできた法律により、世界中のあらゆるシーンに影響を及ぼしているため、日々新たな規制や法律を定めつつ、正しい規制と、規制から逃れることのせめぎあいが日夜行われています。


このように、投資において全体利益を考えられる正しい目を持つことは非常に重要なのです。